
2025年5月30日
5月23日、マンダレー市内のカフエ二階の画廊では、被災者支援絵画展示即売会とブックフェアが開かれるはずだった。21日にSNSで開催が告知されていた。22日、画家を含む5名が会場で逮捕された。画廊は閉じられた。この一件は、市内の文学芸術関係者の談話として、27日のSNSに投稿された。逮捕者の名は公表されていない。
3月28日の震災直後、SNSは「国軍」に近い富豪や俳優たちの被災地支援風景で賑わった。いまはそれも鳴りを潜めた。市民や作家グループの支援は、控えめに投稿される。支援対象地域を明示しない投稿も多い。「国軍」の妨害から活動を護る知恵にほかならない。
いまも毎日どこかで余震がある。マンダレー周辺のみならず、シャン州やヤンゴンまで揺れている。5月中旬を過ぎて少し収まったかに見えたが、25日は早朝にマンダレーでM4.0を数えた。おまけに乾燥地域のこの一帯を大雨と大水が襲っている。地盤が緩んで倒壊した建物もある。被災者は360万。復興には程遠い。
威容を誇る建築が屹立していた首都ネーピードーは、被害が甚大だ。がれきの撤去さえ終わっていない。省庁は使い物にならない。コンテナやモジュールハウスを準備中だが、決済も完了していないという。各国からの支援金と国内富豪の寄付で集まったはずの5500万ドルは、どこに行ったのだろう。
撤去作業で見かけるのは消防団だ。作家K2(本便り25年4月25日参照)の話では、彼らは「国軍」や警察の別動隊だ。日頃は賭場や駐車を管理し、市民から寄附も強制徴収して、活動資金に充てている。一方「国軍」の作業は、司令部のあるマンダレー王宮内で、人力でがれきを撤去する様を一度だけ目にした。彼らは復旧より、戦争犯罪に一意専心中だ。
余震と同頻度で空爆がある。NUG(国民統一政府)の発表では、3月28日から4月25日までの空爆死者は242名。5月7日までの4か月間で空爆は1000回を超えたという情報もある。7日から10日の「国軍」総司令官のロシア訪問後、空爆が増加したともいう。
12日には、ザガイン地域でNUG教育省管轄下の学校が空爆された。生徒22名と教員2名が死亡し、40名が負傷した。遺骸は散乱し、回収に時間を要した。「国軍」はこの空爆を否認している。25日には、バゴウ地域で結婚式挙行中の民家が直撃された。花嫁を含む12名が死亡した。バゴウ地域やマグエー地域の村への焼き討ちも後を絶たない。空爆は、このほかシャン州、カチン州、ラカイン州、チン州、カイン州、マンダレー地域、マグエー地域、エーヤーワディー地域など、広範囲に及ぶ。クラスター爆弾や化学爆弾も使用中だ。
空爆地域の拡大は、革命勢力支配地域拡大と表裏をなす。革命勢力の「国軍」基地占拠、「国軍」兵士の戦死、その投降風景なども、連日SNSに投稿される。 PDF(人民防衛隊)は15日に、マンダレー地域にある中国の天然ガス・パイプラインを警備する「国軍」基地を占拠した。AA(アラカン軍)が支配網を広げるラカイン州では、27日に中国の天然ガス処理工場が従業員の逃走で無人となった。一方20日、カチン州でKIA(カチン独立軍)が「国軍」ヘリ二機を撃墜した。「国軍」側は、うち一機は故障による墜落だと主張している。
さて、作家たちも動いている。たとえば、女性作家T2(便り23年2月1日)主宰のヤンゴン葬儀支援協会には連日寄付が寄せられ、被災地に物資や金が届けられる。T2は、8月の女性作家Sの生誕80年記念文学コンテストに向け、選考委員も務める。また、作家M(便り22年10月3日)が訳した『ノルウェイの森』改定版もヤンゴンで出版された。初版は検閲解除年の2012年だが、実は2010年以前の検閲で三分の一が削除されていたという。極めつけは、AA副司令官の詩集『白い叛徒』の出版だ。ラカイン語、ビルマ語、英語で40編を収める。売り上げの15%は、戦闘で障碍者となった兵士の支援に充てられる。
南田 みどり(みなみだ みどり)=1948年兵庫県に生まれる。大阪外国語大学外国語研究科南アジア語学専攻修了。大阪大学名誉教授。ビルマ文学研究者・翻訳者。