コロナパンデミック問題について

林 利光

 

3.ワクチンで大丈夫?

 

ワクチン接種がコロナ禍に対する唯一の有効手段のようにいわれていますが、本当にそうでしょうか? ワクチン接種の目的は、体内でウイルスに対する中和抗体(ウイルスが細胞に結合するのを阻止する抗体)を作らせて感染を予防することです。私たちに馴染み深いワクチンとしては、幼児期に接種される麻疹や水疱瘡のワクチン(生きたウイルスを弱毒化した「生ワクチン」)や毎年流行するインフルエンザのワクチン(ウイルスの感染力をなくした「不活化ワクチン」)などがあります。

現在、世界的に注目されているのはウイルスの遺伝子情報に基づいて作られた新しいタイプの「メッセンジャー mRNAワクチン」です。これは、コロナウイルスに特有な「スパイクタンパク質」をつくるmRNAを遺伝子工学的に合成したもので、接種後に体内で作りだされるスパイクタンパク質に対する抗体(主としてIgG)の産生を期待したものです。ちなみに、mRNAワクチンの開発技術は、SARSのパンデミックの際に、米国や英国の大手製薬会社が既に導入していたので、新型コロナウイルスのゲノム情報が公開後に短期間で開発・承認が可能になりました。我が国では、ワクチン開発の体制が不備なので海外に依存せざるを得ない状況です。

通常、抗体はワクチン接種1〜2週間後に作られますが、1回の接種では再感染時に十分な量が作られないので、2回以上接種する必要があります。また、ワクチンの効果を高める目的でアジュバントと呼ばれる物質が一緒に投与されます。ただし、様々なストレスを受けている人や摂取する栄養成分のバランスが悪い人では免疫機能が低下しているのでワクチンの効果は弱いと推測されます。さらに、ワクチンとアジュバントは体内には存在しない「異物」です。そのため、接種部位の腫れや痛みのほか、頭痛や発熱、倦怠感などの副反応が起きます。また、アナフィラキシーと呼ばれるアレルギー過敏反応が起こることもあります。

なお、最近感染拡大している変異株は、スパイクタンパク質の構造が変化したものですが、その中には、感染力が強い上に、ワクチンが効きにくくなるものも報告されています。

ところで、私たちのからだには、様々な機能を持つ細胞がありますが、不要になると分解され、再生されます。再生細胞の合成には分解産物が再利用されるほか、大半は摂取した食材の栄養成分が利用されるので、食事は重要です。ちなみに、種々の食材に含まれている難消化性食物繊維を摂取すると、腸管粘膜や気道粘膜に存在しているマクロファージや樹状細胞などが活性化されるとともに、分泌型の抗体(IgA)が速やかに産生されることが報告されています。これらの知見は、難消化性食物繊維の摂取が再感染予防にも有用であることを示しています。

とはいえ、コロナ禍にあって、医療従事者や長距離運送業者など長時間労働をせざるを得ない人たちや低所得者のように、時差出勤や時短の要請があっても、十分な食事も摂れない厳しい現実があるのも事実です。したがって、個々人がもっと精神的にゆとりを持てるような生活を可能にするための社会的配慮と支援が強く求められます。

今こそ、ワクチンに過剰な期待を抱かず、日常の食生活を見直すとともに、ストレスフルな生活全体に目を向けてみる必要があるのではないでしょうか?

 

 

2.感染症とのたたかいの長い歴史

 

感染症のパンデミックは、ウイルスや細菌が広い地域で多数の人々に感染し、最悪、死に至らせます。
このようなパンデミックは、国家間の戦争の歴史と密接に関連しています。これまでに、パンデミックを引き起こした感染症としては、細菌による「ペスト、コレラ、赤痢、チフス、梅毒、結核」やウイルスによる「天然痘、麻疹、エイズ、エボラ出血熱、インフルエンザ、新型コロナ」などがあります。また、蚊が媒介するマラリア原虫による「マラリア」が知られています。
1918年に世界中に感染拡大したインフルエンザ(スペイン風邪)は全世界で4,000万〜5,000万人もの死者を出しましたが、2009年に大流行した新型豚インフルエンザは、ブタ、トリ、ヒト由来の遺伝子をもつウルスがブタに同時感染して出現したウイルスがパンデミックを引き起こしたものでした。なお、天然痘ウイルスや麻疹ウイルスのように感染拡大中に遺伝子変異が起らないウイルスに対しては、ワクチン接種は効果的ですが、変異株が出現するウイルス感染症に対してはあまり期待できません。
ところで、もとは特定の地域で流行していたものが、地域間の紛争や人的交流などにより、次第に感染拡大し、パンデミックに至った感染症があります。例えば、黒死病と呼ばれていたペストはカザフスタン周辺に生息するネズミなどの感染症でした。ペストはネズミの血を吸って感染したノミがヒトを刺咬する事で感染することが判明していますが、感染したイタリアの商人によってシチリア島に持ち込まれ、そこからヨーロッパ各地に広がったとされています。また、コレラはもともと、ベンガルのデルタ地域に古くから存在した風土病でしたが、19世紀になってからインドのかなり広い地域で流行後、瞬く間に全世界に感染拡大したと言われています。一方、SARSおよび新型コロナは、それぞれ中国の広東省および湖北省に生息するコーモリからヒトに感染してパンデミックになったことが報告されています。
これまで繰り返し発生した感染症のパンデミックにより、多くの人命が失われ、政治・経済システムの破綻が明白になったことから、感染症の発症要因の科学的な解明とそれらに対する治療・予防法の確立は重要な検討課題となってきました。電子顕微鏡の実用化、治療薬やIT技術を用いた医療機器による診断・治療法の開発、人工知能(AI)の活用によるビッグデータの解析などが実現しましたが、新型コロナなど、まだ効果的な治療・予防法が確立していない感染症もあります。
人類史において、感染症のパンデミックは同時的に多数の人々に健康被害をもたらし、甚大な経済的・精神的苦痛を与えたという点で「戦争」と共通しています。また、両者は、それまでの社会制度や医療体制の弱点をあぶりだし、社会進歩の歴史に多大な影響を与えてきました。今後、コロナ禍で露呈したグローバリゼーションを優先する新自由主義的政策の問題点と見直しが求められているのではないでしょうか。

 

 

1.新型コロナって何?

新型コロナの感染拡大の第4波がおしよせています。馴れと諦めに加えて政府の対応策のあいまいさもあってガマンも限界、というところですが、感染力の強い変異株も出てきているので、軽視は禁物です。あらためて、新型コロナウイルスの特徴を整理してみましょう。
 新型コロナウイルスは、2002年に中国広東省で発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)の原因ウイルスの仲間(RNAウイルスに分類されるコロナウイルス)です。コロナウイルスに共通している特徴的な構造は、子孫ウイルスの複製(増殖)に必要な遺伝情報が組み込まれた遺伝子(RNA)を包みこんだ入れものの外側にエンベロープと呼ばれる膜がおおっており、スパイクタンパク質という突起が突き出ている点です。この突起が王冠(コロナ)のように見えることから「コロナウイルス」と名付けられました。なお、ウイルスは単独では増えることはできません。ウイルスは他の生物に感染し、細胞内の成分を利用して増殖する(ウイルス自身のコピーをつくる)ことになります。増殖したウイルスは細胞外へ飛び出し、ほかの細胞に侵入してさらに増殖を続けます。また、唾液の飛沫などと一緒に体外へ出て、別のヒトに感染します。
 第4波の感染拡大で急増しているのは「変異型ウイルス」ですが、これはウイルスの表面にあるスパイクタンパク質の一部が変異しているものです。この変異によってヒトの細胞表面にある受容体(ACE2)への結合が強くなるため、感染力が増加すると言われています。さらに、変異株の種類数も増えてきており、従来株よりも感染しやすく、重症化しやすいものも認められています。
 ウイルスがヒトに感染すると、からだにそなわっている免疫機能が働き始め、感染したウイルスを「異物」と認識・排除するために免疫反応が起こります。その結果、「発熱、炎症」などの様々な症状が現れてきます。新型コロナウイルス感染症の主な症状としては、発熱、肺炎、呼吸困難、嗅覚・味覚障害、血栓症などの合併症が報告されています。また、感染しても発熱などの軽症で回復する人や無症状の人が多いことも判明しています。さらに、回復後も長期間にわたって「抜け毛、ブレインフォグ(脳の霧)、めまい、呼吸困難、嗅覚障害、倦怠感など」の後遺症が続く人がいることが分かってきました。
 基本的な感染予防対策は、変異株であっても、3密を避け、マスクの着用、手洗いに加えて、免疫力が低下しないように、「食事による栄養成分の摂取、休養、適度の運動」を行うように心がけることです。

 

 


 

林 利光(はやし としみつ)
1945年に中国(満州)で生まれる。1975年京都大学大学院薬学研究科博士課程修了。1985~86年、国際協力事業団専門家としてパラグァイのグァラニ―インディオの伝承薬の調査研究プロジェクトに参加。2011年、富山大学名誉教授、中部大学生命健康科学部客員教授。
ウイルス感染症のパンデミックと国民生活 食によるコロナ対策の科学的エビデンス』(本の泉社)